性感染症には、主に次のような病気があります。
- 性器クラミジア感染症
- 淋菌感染症
- 梅毒
- B型肝炎ウイルス(HBV)
- C型肝炎ウイルス(HCV)
- HIV
- 腟トリコモナス症
- 咽頭部クラミジア・淋菌感染症
- カンジダ外陰腟炎
- 性器ヘルペス
- ケジラミ症
性感染症検査
性行為を介して感染する病気で、STD(Sexually Transmitted Diseases)とも言われます。次の症状がある場合は、性感染症が疑われます。
また、症状がなくても感染している場合があります(無症候性感染)ので、ご不安な場合は早めに受診してください。
(症状がない場合は自費での検査となります)
粘膜同士の性的な接触によるクラミジア・トラコマティスの感染が原因となります。症状としては、おりもの(帯下)の異常、性交時の出血、下腹部や右上腹部の痛みが出ることがあります。一方で女性では症状が軽く、無症状のことも少なくありません。診断は性器や尿道からの分泌物や尿、咽頭うがい液で検査をして行います。
治療には抗菌薬を使います。放置すると子宮内膜炎や卵管炎、骨盤内炎症性疾患となることがあり、不妊症の原因になることもあります。
粘膜同士の性的な接触によるNeisseria gonorrhoeaeの感染です。 症状としては、おりもの(帯下)の異常や月経以外の出血(不正性器出血)が見られることがありますが、症状が軽く感染に気がつかないことも少なくありません。咽頭への感染もありますが、その場合は自覚症状がないことも多いです。
診断は性器クラミジア感染症と同じように、性器や尿道からの分泌物や尿、咽頭うがい液などの検査で行います。
治療には抗菌薬を使います。放置すると、性器クラミジア感染症と同様に子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内炎症性疾患や不妊症の原因となることがあります。
皮膚・粘膜にある病変との性的な接触による単純ヘルペスウイルス(HSV)1型もしくは2型の感染が原因となります。潜伏期間は約2~10日です。症状としては、性器の痛み、水ぶくれ(水泡)、ただれ(びらん)が生じ、発熱や倦怠感が伴うこともあります。診断は病変部のウイルスの抗原検査で行い、必要があれば血液検査で抗体検査を行うこともあります。治療には抗ヘルペスウイルス薬を使います。しかし、再発を繰り返すことも少なくありません。頻回に再発を繰り返す場合、再発予防を目的に抗ヘルペスウイルス薬を内服することがあります。
皮膚や粘膜にある病変との性的な接触による梅毒トレポネーマの感染が原因となります。
潜伏期間は約3週間です。近年、感染者数は増加傾向にあります。
症状としては、性器、肛門や口腔内などの感染部位に硬いしこり(初期硬結)やただれ(潰瘍)ができ(硬性下疳)、近くのリンパ節が腫れます(第1期)。その後、3ヶ月前後経過すると、発熱、全身倦怠などの全身症状とともに、全身の皮膚や粘膜に様々な発疹が現れます(第2期)。さらに3年以上経過すると臓器障害が進行し(第3期)、感染してから10年以降になると心臓や血管、脳にまで影響が現れ、死亡に至る可能性もあります(第4期)。診断は病原体を顕微鏡で確認するか、血液検査で行います。
治療には抗菌薬(主としてペニシリン系)を使います。放置すると第1期から2期、3・4期へと徐々に進展し、痙攣、意識障害や死に至ることもあるほか、母体が感染すると新生児が先天性梅毒になることがあります。
ヒトパピローマウイルス(HPV)の主に6型、11型による性感染症で、性的接触による皮膚や粘膜の病変との接触により感染します。症状としては、性器や肛門周囲などに鶏冠様またはカリフラワー様のこぶ(腫瘤)ができます。診断は、病変部の観察や組織を採取して組織診断を行います。
治療は専用のクリームが第一選択となりますが、それ以外に冷凍療法、切除やレーザーなどがあります。腟内などの粘膜ではクリームの使用は禁忌(使用できません)となります。表面上は治っても、20~30%は3ヶ月以内に再発することがあるので、しばらく外来通院が必要となります。
Candida albicansなどの真菌が原因となり、おりもの(帯下)の異常、陰部の痒み・痛痒さなどがおこります。約75%の女性が生涯で少なくとも1回は罹るといわれています。
性行為を介して感染することもありますが、抗菌薬の内服がきっかけとなることが多いです。妊娠、糖尿病、通気性の悪い下着などがきっかけとなることもあり、原因が分からないことも多くあります。
診断は顕微鏡による検査や、培養検査によって行います。治療には抗真菌剤の腟錠や軟膏・クリームなどを使います。外陰部を清潔に保つことが大切ですが、石鹸を使用すると炎症が悪化してしまうこともあるため、外来にてご相談ください。
腟トリコモナス原虫が原因となり、おりもの(帯下)の増加、月経以外の性器出血(不正性器出血)などがおこります。一方で、約10~20%は感染していても症状が出ない(無症候性感染)といわれています。
性行為で感染することがありますが、性行為以外でも感染することがあります。
診断は、腟分泌物の顕微鏡での確認(検鏡)や培養検査で診断します。
治療は内服薬が第一選択となりますが、内服できない場合は腟錠を使用することもあります。
病原体は陰毛に寄生するケジラミです。性行為等に伴う陰部、陰毛との直接接触が原因となることが多いのですが、プール、サウナや家庭内でタオル、衣類や寝具などを介する感染もあります。
症状としては寄生部位の強い痒みです。診断は皮膚・陰部・毛髪などの虫体や卵の確認で行います。
治療は剃毛するか、フェノトリンパウダーあるいはシャンプーを用いて行います。放置しても治ることはなく、症状の継続あるいは悪化を来たします。